February 14, 2018 -

As told to Ryu TakahashiBrandon Stosuy, 151 words.

Tags: Art, Research, Fashion, Focus, Independence, Curating, Japanese.

吉田真一郎が語る好奇心への誘導について

  Copied link to article!

古代布のお仕事について教えて頂けますか?

ボロって知ってるかな?25年くらい前に、僕はこんなボロをアートだって言って本に載せたの。当時日本人は捨ててたから、まだ5000円くらいで安かって、これを集めてた。小さい絹の端切れを集めて農民がパッチワークをした物で。当時の日本人はこういうのが面白いっていうよりも、大切にしてたわけ。貧乏やったから、ここが破れてたら、継ぎ足して。ほんでこれをキャンバスに見立てて、アートやないかって思ってこれを(本に)載せたわけ。ところが日本人は分からなかったの。この本が出て10年経ったら、イタリアの人がこの本を参考文献にあげてくれて、イタリアでかっこええボロの本が出たの。それから世界でわーっと広がって。Visvimの中村ヒロキとか、外国のファッションデザイナーとかがこういうの好きなんよ。ほんで村上隆も最近集めてるらしい。

これをアートだと思い始めたのはいつ頃からですか?

もう二十歳くらいから。 本業はアーティスト、絵描きやから。若い頃から見てて、クルト・シュヴィッタースとかのパッチーワークのシュルレアリスムにあるわけよ、こんなん。まぁもちろん違うんだけど、でもなんか近いなと思って。アーティストというのはアトリエにこもって、特にあの頃は油絵で描いて額縁に入れていたわけ。ところが待てよと思って。ダダや昔のロシア・アヴァンギャルドも見てると、これに近い作品が多いわけよ。となると、無名の農民のおばさん、こっちの方がアーティストではないのかと。もちろん本人たちは作品を作り出しているとは知らないけど。

YS-pic1.jpg

Detail from studio visit. Photo credit: Michael Renaud

実用性のある物を作るのと、売るという行為の違いついてはどう思われていますか?

僕は作品も売らないって決めたんだけども、それはたまたま、なんか知らないけど時代性やと思う。今の時代は売るっていうことが、まぁ悪いことでもないし。骨董屋とかが目をつけて、そうすると商売にもなる。アートも似てるんだよね。昔売れなかった人も後に何千万って値が付くこともあるじゃない。だからこれを美とすればね、アート的要素を持っているのはこの世の中にゴロゴロとあるわけよ。それに気がつかないだけのことで。で気がついたものをピックアップしてね、この前僕の持ってるボロのやつがパリで120万円の価値が付いたの。だけどそれは日本では千円でも売れなかったの。汚いと思ってた。洗ったの?とか言って。ところが視点を変えたら、ものすごいお金持ちが、ものすごい清潔で立派なリビングに飾るわけ。というのは、結局新しい物が作られるんじゃなくて、この世の中には注意して見ると、すぐ隣にアート的要素が見方によってはいっぱいあると。  

もう一つ面白いのが、これは沖縄で昔手に入れたんだけど、これ藁算って言って藁で作ってあるの。約100年くらい前まで使われていて。沖縄には文字が読めない、数字が分からない、計算出来ない、そういう人たちがいっぱいいたわけ。この結び目が数字を表していて、例えば店屋の前にこの携帯電話が並んでると、これで値段が分かったの。で俺からすると、これとこれが一緒に見えるんよ(笑)。

俺若い時にドイツで(ヨーゼフ・)ボイスとよく会ってたん。ボイスの影響なんよ、こういう日本の民族のことをやりだしたのは。ボイスは言ったわけよ。おまえの作品は売れるかも分からないと。でも売れるだろうけど文脈が無いと意味はないと。そんなことを言われたの初めてだったのよね。そのルーツと作品っていう。その時俺は白い絵を描いてて、絵は面白いと興味を持ったわけよ。けど興味を持つってことは、当然知りたくなるのよ、人間ね。知りたくなって聞いたら答えられない。ということは意味なく描いてる絵、それは意味が無いって言われた。それから俺はこんなところにいる場合やないと。なぜなら日本のことを知らない。まさにボイスが言ってるのは、こういうこと(藁算)がアートだと。

ys-pic2.jpg Detail from studio visit. Photo credit: Michael Renaud

そういった視点を取り入れてから、描く絵にはどのような変化がありましたか?

画廊とか美術館とかからオファーはあったんだけど、一切やらなかったの。今年69になったんだけど、白のドローイングとデッサンは毎日今もやってて、白にこだわったわけ。でも発表はしないだろうなと思って、白の絵は。

去年、渋谷の映画館でボイスの映画を観に行って、その後ふっと、あれ俺ボイスが死んだ歳より上にいったなと。で帰り際に、たまたまYCAMからオファーがあったんよ。そんで白の大麻布を50枚でやろうと。

個人的なんだけど、ずっとボイスに言われたのが気になってて。決着着けなきゃと思ってて。この布を1点づつ見てると白い布だけど、ところがこれを塊で並べると、同じ白はないんよ。気配がすごい。

ys-pic4.jpg

Photo credit: Kazuomi Furuya. Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]

それをペインティングやりたかっただけのことで。油絵やアクリルでキャンバスに塗るというのも、この布をこう繋げるのも、俺にとっては一緒だから。

こういう布は長年いっぱい扱ってたけど、自分でも気がつかなかった。これをやるときに布を顕微鏡検査して、白い布で分類して、 これをあくまで参考品で50点くらい積み上げてた。休憩をから戻って、無造作に積まれた何十点がまさにこの白だったんよ。それがものすごい気配だった。自分で描いたペインティングってのは、どうしても意識が入ってくる。ということは、俺からすると、描くってことは、白でこのことを狙うと工芸になる。なんかアートじゃない気がする。なんぼ無意識のように描いてたとしても、塗ってるじゃん。それよりも自分のもっと素直に目指してるものっていったら、あるものをこうやって並べただけで、これですよと。この方が自分に近いと思って。

ご自身の事はアーティストと捉えていますか?それとも歴史家と捉えていますか?

もちろん絵描きでずっと一生終えようと思ったけど、これを顕微鏡検査で調べているうちに、この糸が大麻なのか苧麻なのか、リネンなのかって、いろんな繊維があるわけ。それで糸を取って調べて、自分で分かりたかっただけ。それを分類しているうちに、ある時に博物館がやって来て展示をやってくれって。というのも博物館は破壊検査って言って、糸を取ることが出来ない。だから未だに国立の博物館でも、大麻と苧麻とイラクサっていうのが、まとめて麻になってるの。

例えばこの江戸時代の着物を二つを見ると、これ両方麻なの。こっちは大麻、こっちは苧麻。これは俺にとってはすごい重要なことなの。でも素人が見たらどっちも一緒なの。 犬と猫を一緒にしてるようなところがあるわけ。これ全く植物として違うわけ。 

そういうことばっかりをやってたわけ、自分で分かるためにね。一方はアートの方。自分の方はそれをいつかやろうと日夜やってて。でも絵を売らないから他の職業でいろんなことやった。 

ys-pic3.jpg

Detail from studio visit. Photo credit: Michael Renaud

それで20年の間に顕微鏡検査で約1000点検査して全部分類して、それを10箇所くらい色んな展覧会をやると、麻の研究家になるわけ。ちょうど一ヶ月前、その麻の研究で博物館でやったやつで賞が来たの。で別に欲しくないの、こっちはね(笑)。非常に名誉なことなのよ、でもこれはアートの賞じゃないわけよ。アートの為にやってて、自分の作業の為にやってたことがついでに博物館でやってるようなとこ。未だによく肩書きが布の研究家だって。でも布の研究をするという意識は全くなかって。

新しい物を作り出すのと、既にある物を見つけ出すというお話をされましたが、新しく作られた布についてお話頂けますか?

今の麻のシャツっていうのは、だいたいリネンなんよ。リネンがもう80%くらい。いわゆる工業製、機械生産でヘンプを使うということはあっても少ないと思う。日本に木綿が伝わったのは江戸時代で、それ以前っていうのは麻の硬いものを着てるって思われてた。けど僕が持ってる江戸時代の布はふわふわなんよ。柔らかい。でも全部ヘンプなわけ。日本人は古来からずっと ヘンプをさらして、白くすると木綿みたいに柔らかくなる。っていう事を言ったら最初は理解されなかったけど、だんだん浸透してきて。それを工業製品としてもう一回作ったら、っていうので、麻世妙を立ち上げた。江戸時代にこの風合いの大麻の着物や仕事着はいっぱいあるんよ。工業製品のヘンプでこの柔らかさは多分世界で初めてだと思う。

これは素肌に着てもチクチクしない。試しに伊勢丹に行って、高級な紡績の麻のシャツを5-6枚買って着てみたんよ。手触りはツルツル。ただどっかチクチクするから素肌に着られない。ただこの江戸時代のはチクチクしない。素肌に着られる麻の大麻布が江戸時代にはあるから、これが工業製品で出来ないんかって思って。

だから日本では結構話題になって。でこれはAvexと組んで一緒にやってて、少人数のチームでやって。何年もかかったけど、ここまでこぎつけて、三年前に出来て。

興味が発端となってこうして自然とプロジェクトになっていくことが多いように感じます。

そうそう。福井県の鳥浜貝塚っていう貝塚があるの。縄文時代なんよ。ここでこんな小さな布の破片が出て来たのね。1万年ほど前の。これの繊維検査を国がやったら、大麻やったの。ということは、1万年前からヘンプを栽培して使ってたということ。

Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]

ということは日本という民族は、ヨーロッパから来たリネンじゃなくて、一番古い繊維を着るべきだと。だから常に考え方の根っこにボイスがあるのよ。どうしてもそっから逃れられない。やっぱルーツ的には、アマのシャツ着るんだったら、大麻でないかと。

やっぱり大麻ってのは日本人にとって重要な布なんじゃないかって思うの。伊勢神宮も大麻だし、神道がそうだし、それから仏教もそうだし。横綱のまわしも元々大麻だった。神社の神官の人たちの着る白い着物は全部大麻だった。それが崩れてきてるんよ。アマを着てるわけ。それをあんまり言葉で言うとあれだから、そういうのを日常の若い連中のTシャツやシャツやら、日常生活から入り込んだらいいんじゃないかなって。

ここにはアーティストとかが寄ってくる。自分たちもそうだと思うけど。ギャラリーの連中もよく来るんだけど、そういう話が分からないのがほとんどなの。そこを分かるギャラリーとだったら組んで出来るかなと思うけど、一つもない、いまのところは(笑)。

まぁ、隣のカフェでコーヒーでも飲む?

SY-pic.jpg

Photo by Michael Renaud