As told to Ryu TakahashiBrandon Stosuy, 109 words.
Tags: Food, Art, Inspiration, Collaboration, Independence.
完全な環境を作るには
レストランの運営や映画作りなど様々な活動をされていますが、食を通して成し遂げようとされていることは何ですか?
生きるという事に直結してるのもあるし、パーソナルな意味もあるし、社会との繋がりっていうのあるし。食っていう切り口だと、誰もがあることで入り口を狭めないから、そこにすごいポテンシャルがある。個人でも考えられるし、「我々は」っていう考えも出来る。そこはもう永遠のテーマで、ビジネスというよりも回すっていうか。その中の一つになりたいとは思います。
レストランを運営しながら様々なプロジェクトに携わっていて、忙しい日々の中、自身の中でどの様に楽しさを保っていますか?
チームでやっているので、私は毎日レストランに立っていないけど、風が流れるという事をすごい大事にしています。 物理的に言うと海外のいろんな人を呼んで来たりとか、こっちが行くこともあれば、いろんな複合的な要素だと思う。音楽もそうだし。あ、煮詰まってるな、って察知するってことも大事だし。いろんな物とよく対話することが好きなのかもしれない。
eatripは都内の中心に位置しながら、とてもユニークで静かなロケーションにありますが、実在の「場」はどれだけ重要ですか?
場を作るのがすごい好きで、事が起こったり、何かエネルギーがある物に対して人は集まって来る。それは一方的でなく、集まってきた人もエネルギーを発することで場が回ると思っています。最初にどっちかが仕掛けなきゃいけないとなると、こうして場所を持ったとき、自分の気分が上がるところじゃないと何となくイメージが出来ない。だから無理やりやろうとは思わない。少なくとも自分の心が動くというか。
Photo Credit: Michael Renaud
フード・ディレクターという肩書きにはどういった意味があるのでしょうか?
全然意味がないの(笑)!その横文字も嫌で、料理人でいいとも思ってるんだけど。誰かが勝手に言い始めただけで。でも料理ってお茶の世界とも通じていて、料理を出すだけじゃなくて、人を迎えるにあたって、じゃあ花を活けておこうかなとか。その空間を作るとか、あと目に見えないおもてなしとか、総合的だよね、って意味でフード・プロデューサーみたいな。食がイニシアチブをとって、だったらこのテーブルの方が良くない?とか。昔は単純にお腹を満たす為の食で、そういうとこがあってもデザイナーの人が一番偉いとか。だったのが、その場を作る時にまず食の人が一番中心になって考える場作りを多くさせてもらってたから、誰かがそう呼び始めて。何だっていいんだけど(笑)。
映画を作られたのも、そういった新たな空間を表現するという意味もあったのですか?
その時はまだレストランを持っていなかったから、ケータリングとか雑誌の連載とか、そういう流れから当然本を作りましょう、という話に。でもその時はまだ食の世界に入って十何年で、鬼のようにレシピ本がすでにあって、なんか私がやらなくても本の役割の人ってもっといるし、私が出来ることってなんだろうって思って。当時はロハスブームで、テレビとかラジオにも全部にロハスって名前がついてて。それも大事なんだけど、人が生き生きしてたり、普通にやってた方がいいじゃないかって。私一見こうナチュラリストっぽく見られるんだけど、天真爛漫で古い車も乗りまくるし、音楽もロックとか好きだし。食への向き合い方が、食を生業としている人よりも普通に尊敬できてよっぽど取り入れたいと思える人がいっぱい周りにいたから、そういう人を映し出した方が、本を出すかとよりも感銘受ける人が多いんじゃないかと思って。
そういった環境作りみたいなものは、食を無くしてなり得るとは思いますか?
出来ると思うけど、(食は)人としての共通言語っていうか。何か分かち合う物があった方が、その説明もいらないし、体に入るものだし、そういう意味で食って強いだろうなとは思う。全部言葉にして説明するのってナンセンスだなって思うし。感じることだから。食ってもっと原始的な部分もあるから、そういう意味では体感も出来るからなんか分かりやすいっていうか。
Photo Credit: Michael Renaud
クリエイティブなプロジェクトとビジネスとの両立はどの様に行っていますか?
ビジネスは全然ダメ(笑)!どうしてもそこに頭がいかないから。でもさっきも言ったとおり、回すって大事だと思うの。だから例えば一億円あったとしても、何に使うかっていうのより、やっぱり人って刺激とかに向かうと思う。じゃあ余ったお金と時間で何がしたいかって言ったら、結局お金を持ってない時にやりたかった事と一緒だったりするの。だからプライスレスのことってやっぱり自分の生きがいのことだったり、生き生きしてたりとか、満足度の方を重視するから。それをやってるとある程度は絶対共感をしてくれたりする人がいたり、回ると思う。
新しくレストランを始めようとする人に何かアドバイスはありますか?
フィロソフィーははっきりしておいた方がいいと思います。
eatripのフィロソフィーは何ですか?
まず大事なのは、旬のもの、良い食材。それで誰が作っているか顔が見えるように。あとは、なるべく働いている人自身の状態。それは私も含めて。やっぱり人の手が入るって、技術だけじゃなくてエネルギーもあるから、なるべく良い状態にあるようにすごい気をつけています。
Photo Credit: Michael Renaud
アイディアに詰まってしまったりする事はありますか?その際にはどの様に対処していますか?
あるある。無理はしない。では人かな、やっぱり。何人かゆっくり話せる人がいるとね。もう本当にいろんな友達がいて。それと目的地に着くまでの移動してる時間が結構好きだから。飛行機に乗ってる時とか、そういう時間があるとふっと。多分外にばっかり目を向けてると、意外と見落としている。引き出しがぽっと出てくるから、そういう意味でも移動するのかもしれない。
新しい物を生み出す原動力は何ですか?
やっぱ人なのかな。とは言え、いつも新しい事とかを考えてるわけじゃなくて。別におとなしくしてたいの、本当に(笑)。人に心を掻き立たれることもあるし、本当に自分が何を求めているんだろうとか。そういうことを突き詰めたい。だからこの食の鼓動っていうのも、それの一つなんだけど。その次に何が起こるか分からないし、そこまでは考えられてないんだけど、でもその熱が集まって来たり自分が興味があるってことは、少なくても行動し始めると形になる。映画の時もそう。多分その後にいろんなムーブメントが来たり、いろんなことが起こると思うんだけど、そこを尊重したいなと思ってて。だから無理矢理にはやらないんだけど。
Photo Credit: Michael Renaud
その食の鼓動のイベントについて話して頂けますか?
簡単に言うと、見えない食っていうことで。去年いろんなことがあった時に、人とじっくり話す機会が多くて、その中で一番影響があったのが、医療と芸術は対だっていう現役の東大のお医者さんがいて。外的要素っていうのは医者で治せるけど、内面的の心身と、その両方が結び合っていかないと本当の意味で治りませんよ、って言ってる先生で。お能をやってたり、ユニークな人なの。
食に対しても、固形物とか液体ってのは体を作るんだけども、その人の気持ちとかエネルギーとか記憶とか、そういった目に見えない物も同時に食べていて、それがすごく本当の対になってエネルギーになっている。私も常日頃食べてて何が美味しんだろうと。この場が楽しかったからなんじゃないとかさ。あと色々目に見えない要素も含めてそれが結果として言葉で美味しいとなる。多分いろんなことを感じてるわけ。病気になってお母さんのご飯が優しいと感じるとか。それで目に見えない食っていうのを、少しフォーカス当ててみようじゃないかって。それが体の中に入った時に、自分の中でどういう風な変化というか、エネルギーになってるかっていう、自分の中身も見えるっていう試みです。
イベントは80分くらいのパフォーマンスで、基本は音と匂いで、なるべく視覚をなくした内容。最初は生命の一部だってことを感じたいから、いろんな動物の声とか風の音とかを実際に録音してきて、後ろから上から声が聞こえたりしながら、自然の音とライブの音が交ざる。音っていうのも皮膚から体の中に入るから、それを全身で感じて欲しいなと思ってて。録音した音とライブの音の両方で、人間って事をいったん忘れて、自分が木になったような、水になったような、動物になったような。
そのいろんな生命が人の手によって殺されて、今度は食材となる。それは人間の進化論の過程で。マイケル・ポーランっていう食文学者で、人は料理することで進化したっていう人がいて。その生命が食材となって、今度は料理になる。血生臭いものも、火が入ると急に美味しそうになったり。いろんな生命を一緒に料理するって多分人間だけで、それを表現しようとして。
実際に中で料理したり、いろんなミュージシャンの音を拾いながら、最後にそれがまた体の中に入っていって、一つの人間を作っている。その一つの循環を会場の人たちと一緒に作れたらいいなと思っていて。それもミュージシャンが一方的に曲目を決めて作るってよりも、彼らも実験をして、その音に合わせながら変化する有機的な音楽にしたい。誰が来るっていう反応もだし、あとみんなで手拍子とか足踏みしながら乗っかってって音を出すとか。なんか単に座ってこうじっとして一方的な情報を得るってよりは、もうちょっと内なる声をいろんな角度から引き出せて行けばいいなっていうパフォーマンスです。
レストランに来られるお客さんもいわばパフォーマンスの一員として感じる事はありますか?
あるある。やっぱ一方的にだと成立しなくて。同じ料理を出しても、ちょー美味しいんだけど、って楽しんでる人がいると、こっちも触発されてこの場がすごい盛り上がる。逆にちょっと気難しい人がいて、ケチをつけようとする人がいると、同じ料理でも人によって違うから。その時間を楽しもうっていうポテンシャルが高い人がいると、その場の空気は変わってくるから、毎日がライブみたい。お互いが共鳴しあって作るものだとは思うから。
なるほど、レストランは継続中のプロジェクトなのですね
そう、やっぱり続けることによって力を増してくると思っています。
Photo Credit: Michael Renaud
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